私がペンスケッチ展の会場にいると、色々な人がペンについての質問をくれました。
これから機械式カメラを購入される人に、私個人の観点でコメントします。
(機械式カメラって面倒なんで、拙著に従いアコースティックカメラ=アコカメで略します)
「時を超えるカメラ」「複製空間」を撮影していた当時の装備
アコカメの価格
私は以前から、30年以上も生き延びているアコカメの価格は、発売当時価格+存命プレミアム(希少価値とは違います)が当然と思っています。
1980年以降に主流の、半導体や電子基盤が寿命になれば修理不能の電子制御カメラとアコカメでは、機械としての根本が違います。
ジャンク(不動品)は再生用の部品取りなのでともかく、完動品にはそれなりの価値と敬意を払うのが当然だと思います。
もし、それが高いと思うなら、買うのをやめたほうが賢明でしょう。
最新のデジカメと比べて高いと感じる人は、そのカメラの生き延びてきた奇跡のような歴史や、機械としての魅力を理解できないのですから、たぶん買っても長く愛用することはないと思います。
アコカメの購入
昨今生産中の商品と、根本的に違うことを完全に認識してください。中古カメラは1台1台が唯一無二なのです。
当初は大量生産でも、生き延びてきた経緯、修理歴、保管状況で現在は全部コンディションが大きく違う、世界に唯一のカメラなのです。
私はカメラコレクターではありません。でも、すばらしく綺麗なアコカメやレンズを発見すると「これを引き取って大事にできるのは自分しかいない」と、思うことがあります。
それぐらい、中古カメラやレンズとの出会いは運命的です。
そして、本当に「一期一会」。躊躇すれば他人の手に渡り、二度と合えないことも肝に命じましょう。
アコカメの先輩が「これは良いカメラだ!」と言ったら、飛び降りるのが賢明です。
安すぎる修理代金
一番多く耳にする嫌な話は、修理料金です。
例えばペンFTが不調で分解整備=オーバーホールが必要だとします。修理屋さんの料金が15000円と言うと、多くの人は「高いな~」と言うのです。(他のペンなら10000円ぐらいです)
中古カメラの修理は、並んだ部品を組むだけの新品製造と違います。
現行の電子カメラを修理する際のユニット(ブロック化された部品)の交換ともまったく違います。
少なくても数十個の細かなビスを外し、カムやレバー、バネ、ロッド、コロ等々、超細かな立体パズルを分解しながら不良箇所を捜すのです。50年前に6000円だったペンでも、分解して丁寧に部品を洗浄し、不良箇所を修理し、組立てると「1日仕事」です。
会社員の人なら理解いただけるハズです? 1日社員を拘束したらその仕事の発注者にいくらの対価を要求しますか? 自動車の修理はどうでしょう?タイヤを1本交換したら10分の作業工賃として2000円支払いませんか?
1台1台まるで違う中古カメラの修理。順調でも半日、ヘタすると3日もかかる中古カメラの分解整備が"15000円"で高いと言えるでしょうか?
まして、他のジャンクカメラから必要な部品を調達したり、自作のパーツを組み込む作業までしてくれる修理屋さんに、「1万円のカメラに1万円の修理代は高いよ」と言う人は、ご自分で修理するか、何万円も出して良品が見つかるまで買い続けるか、アコカメのオーナーを辞めなさいと言いたいですね。

最悪の論理
私のペンの主治医T師の仕事を見ていると、近年ますますネットオークションで購入したゴミ同然の中古カメラを修理依頼し、完全主義者のT師の腕を利用してレストアさせる人が多いのに気付きます。
悪意のない人もいると思いますが、ネットオークションは危険な賭けです。
転売を重ねて利益だけを目的とする、オークションプロが増殖しています。出品者の実態は私でも見抜けません。
いい加減な素人分解で「修理済」と称し、購入してから不調なのでT師に開いてもらったら、「破壊行為」が行われていたという例は山ほどあります。
破壊された部品と交換に、貴重な在庫の中古部品も消えるわけです。
上カバーを外したら綿ゴミとダニだらけ、サビと油まみれの部品だったなんて修理でも15000円・・・。T師のストレスはたまる一方です。
誤解が多いのは、レストアしたカメラは「新品」ではないことです。30年以上昔に作られたアコカメはどんな名医の手でも「新品」には戻りません。メーカーの部品在庫など10年以上前に皆無なのですから。
修理したカメラが、現行のデジカメのように「新品」状態で戻ってくるわけでは無いことを、しっかり認識してください。
アコカメの楽しさは、運命的出会いで入手したカメラをたくさん使ってあげること。
壊れたら修理することも思い出だと思います。
私はカメラコレクターではありませんので、以上に不快な発言がありましたらご容赦ください。
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